循環器内科

当科で扱う主な疾患と症状

  • 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 不整脈
  • 心不全
  • 弁膜症
  • 心筋症
  • 大動脈・末梢動脈疾患
  • 高血圧症
  • 感染性心内膜炎
  • 心膜炎
  • 肺塞栓・静脈血栓症
  • 肺高血圧
  • 成人先天性心疾患

虚血性心疾患(冠動脈疾患)の診断と治療

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

PCIとは、動脈硬化などにより心臓に酸素や血液を送る冠動脈に高度の狭窄や閉塞が生じた場合に、手首、肘、足の付け根のいずれかに局所麻酔を行い、カテーテルを使用して血管の内側をバルーン(風船)やステント(金属の網目状の筒)により拡張することで冠動脈の血流を改善させる治療です。近年では、より体への負担が少ない、橈骨動脈からの治療が主流となっています。
現在、ステントに薬剤でコーティングを行った薬剤溶出ステントや、バルーンに薬剤を塗布した薬剤溶出バルーンを使用することにより治療後の再発率は10%以下に低下しています。また、狭窄部位が固くなっている石灰化病変に対してはローターブレーターやダイアモンドバックといった、石灰化を削り取る器具を使用して治療を行っています。
ステント治療後には血液をさらさらにする薬(抗血小板剤)を3ヶ月~12ヶ月程度内服していただきます。内服期間は患者さまの病状により変化します。
当院の循環器内科では、胸部症状を伴う救急患者も24時間体制で受け入れを行っておりますので、いつでもご相談ください。

冠微小循環障害(CMD)

近年、胸が苦しくなる狭心症の症状を持つ患者さまの中に、微小な冠動脈が原因となっていることがあると言われています。冠動脈造影や冠動脈CTで見える冠動脈は心臓の血管の5%の血流に過ぎず、微小冠動脈は心臓の血管の95%の血流を占めるとされています。
当院では、従来は診断が困難であった持続的胸痛の原因としての本疾患に対しても、心臓カテーテル検査の際にCoroFlow™を使用してのCFR/IMR計測を積極的に行っております。

不整脈の診断と治療(その1)
カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションを実施するためには、まず検査・治療用の「カテーテル」という細い器具を体内に持ち運ぶために、「シース」という直径3ミリメートル程度の管を、足の付け根や肩の太い静脈に留置します。その後、シースを通してカテーテルを心臓まで運び、必要な部位に焼灼(あるいは冷却)を行い、心臓の細胞の一部を「壊死」させることで治療効果を得ることができます。
治療内容にもよりますが、カテーテルアブレーション手術には1~4時間程度の時間がかかります。その間は、安全のためにも絶対安静が必要です。また、治療が必要な部位を確認するために、心臓を繰り返し刺激して意図的に不整脈を起こすこともあります。
これまで当院では、カテーテルアブレーション手術を「意識下鎮静」という軽めの麻酔で行っていました。これは、カテーテルアブレーション中の麻酔法として一般的なものですが、術中に患者さまの意識があることが多く、眠っていても「治療に伴う刺激や痛み」によって目を覚ましてしまうこともありました。
そのため、患者さまから、
「説明の時に意識がある状態で治療すると聞いて、びっくりした。」
「治療前に足や肩に管を刺すときの痛みが強かった。」
「心臓に治療をしているときに胸の辺りが痛くなり、心配だった。」
「長い時間安静にしているのが大変で、腰が痛かった。」
「術中に先生たちの話す声が聞こえていたけど、専門用語も多いし、どうなっているのか不安だった。」
といったご意見がありました。
そのため当院では現在、「全身麻酔」でのカテーテルアブレーション治療を導入しています。全身麻酔とは、点滴から麻酔薬を投与して患者さまに完全に眠っていただき、体を動かないようにして、痛みも感じない状態にすることです。
(その間は呼吸が弱くなってしまうので、呼吸の通り道を確保するための「i-gel」という管を挿入し、呼吸を管理していきます。)
全身麻酔を用いたカテーテルアブレーションには大きなメリットが2つあります。

メリット1:術中の苦痛・不安の軽減

アブレーション治療の間、患者さまは完全に眠っていますので、痛みなく治療を受けられます。そのため体感としては、「寝て起きたら終わっていた」という印象になります。
カテーテルアブレーション治療を受けた患者さまへのアンケート結果から、全身麻酔下のアブレーションは治療中の患者さまへの負担の大幅な軽減に繋がるものだと感じています。

メリット2:治療成績の向上

カテーテルアブレーションにおいては、体の動きや呼吸の状態によって心臓の位置が少しずれただけでも、治療への影響が出てしまうことがあります。全身麻酔では体動は抑えられますし、呼吸は人工呼吸器で管理しますので、それらによる治療への影響を極力少なくすることができます。
不整脈の種類によっては、意識下鎮静に比べて全身麻酔のほうが、治療後の成績がよいというデータも報告されています。
当院では心房細動のみならず全ての不整脈のカテーテルアブレーションを患者さまの希望に応じて全身麻酔で行うことができます。
一方で、全身麻酔の場合には意識下麻酔に比べると多くの麻酔薬を使用しますし、一時的に人工呼吸器による呼吸管理も要します。そのため、全身麻酔に抵抗のある方は、意識下鎮静で治療を行うことも可能です。麻酔法に限らず、患者さま一人ひとりのご希望にできるだけ沿って治療を選択します。気になる点やご要望がありましたら、担当医にお伝えください。

不整脈の診断と治療(その2)
難治性不整脈への対応

難治性不整脈にも対応可能な新たな治療デバイス・環境を使用した治療

心房細動

現在日本の心房細動の推定患者数は約100万人以上とされ、今後も高齢化に伴い患者数の増加が予想されています。心房細動に伴い動悸などの症状を自覚される方もいますが、半数近い患者さまは無症状であり、脳梗塞や心不全、認知症などのさまざまな疾患の発症リスクが上昇すると言われています。
症状の有無に関わらず心房細動発症早期にリズムコントロール(カテーテルアブレーションや薬剤を用いて心房細動を起きにくくする治療)を行うことで予後が改善すると報告されており、適応患者さまにはなるべく早期にカテーテルアブレーションを受けていただけるようにしています。
心房細動に対するカテーテルアブレーションを行う方法はいくつかありますが、当院では有効性および安全性のデータが豊富な高周波カテーテルアブレーション(心臓に電流を流して火傷を作成し治療する方法)およびクライオバルーンアブレーション(心臓を冷凍して凍傷を作成し治療する方法)を行っています。2022年3月に新たなクライバルーンアブレーションシステムを三河地区で初めて導入し治療を行っています。

難治性心房細動に対するマーシャル静脈へのエタノール注入

マーシャル静脈は心臓の外側を走行する静脈で、心房細動の原因となる心房期外収縮の発生源となるのみならず、リエントリー性心房頻拍の頻拍回路の一部となる場合があり、心房細動・心房頻拍の発生・維持に深く関与している場合があります。通常のカテーテルアブレーションは心臓の中から心臓に火傷や凍傷を作ることにより治療効果が得られますが、心臓の外側を走行するマーシャル静脈には火傷や凍傷の効果が及ばないことがあり、マーシャル静脈が心房細動・心房頻拍の原因となっている場合には通常のカテーテルアブレーションでは治療が困難な場合があります。そのような場合にはマーシャル静脈にエタノールを注入することにより、心房細動や心房頻拍が抑制されることが期待されます(※全ての患者さまに施行できる治療方法ではありません)。
マーシャル静脈へのエタノール注入は安全で有効性の高い治療方法ですが、施行できる施設が限られております。当院は東海3県でこの治療が施行できる数少ない施設の1つです。

その他の不整脈

心房細動以外の全ての不整脈に対してもカテーテルアブレーションが施行可能です。上室頻拍の一つである房室結節リエントリー頻拍に対しては高周波カテーテルアブレーションに加えてクライオアブレーション(冷凍)での治療にも対応しております。
治療の難易度が高いとされている器質的心疾患に合併する心室頻拍・心室細動に対するカテーテルアブレーションを積極的に行っております。難治性の心室頻拍に対しては、心臓外科と協力してカテーテルアブレーションを行っております。
カテーテルアブレーションは多数の機器を用いて行う治療です。より正確な治療を行うためには、それぞれの機器が発生する電磁ノイズを最小限に抑える必要があります。当院のカテーテルアブレーションは、電磁ノイズ対策を行った不整脈治療専用のカテーテル室で行っております。カテーテルアブレーションを行うには3Dマッピングシステムという装置が必要不可欠であり、現在日本で認可されている全ての3Dマッピングシステム(CARTO3®、Ensite X™、Rhythmia HDx™)が使用可能であり、それぞれ常に最新のバージョンにアップデートして使用しております。
心臓のカテーテル治療ではX線透視装置を使用しますので、わずかではありますが医療放射線被ばくが生じます。3DマッピングとX線画像情報を統合するシステム(CARTOUNIVU®)等を用いて、カテーテルアブレーションの際に発生する医療放射線被ばくの低減に留意しています。

不整脈の診断と治療(その3)
不整脈に対する薬物治療

現在ではカテーテルアブレーションが不整脈治療の主体となっておりますが、カテーテルアブレーションのみでは対応が困難な場合や、患者さまがカテーテルアブレーションを希望されない場合には薬物治療の適応となります。不整脈を抑制する抗不整脈薬には副作用もあるので、当院では安全性に留意した薬物治療を行っております。

不整脈の診断と治療(その4)
植込み型心臓電気デバイス治療(CIEDs)

ペースメーカ

ペースメーカは脈が遅くなる病気(房室ブロックや洞不全症候群など)に対する治療方法です。当院では通常のペースメーカに加えて、適応のある患者さまにはリードレスペースメーカ(心臓内に植え込む小型のペースメーカ)の植え込みを行っております。また、近年有効性の報告が増えてきている刺激伝導系ペーシングにも対応しております。

植込み型除細動器(ICD)

ICDは心臓突然死を引き起こすような不整脈(心室頻拍・心室細動)が起こった際に自動的に不整脈を検知し停止させてくれる機械です。心臓の収縮力が低下している心不全の患者さまは、不整脈による心臓突然死の危険性が高いため、予防的にICDを入れる手術をすることが推奨されており、これを一次予防と言います。心臓の収縮力が低下している心不全の患者さまにICDの一次予防治療を行うことで、突然死を予防することができます。
欧米と比較し、日本では一次予防が必要な患者さまにICD治療が十分に行き渡っていないのが現状で、治療適応があるにも関わらず治療の選択肢として患者さまに提示されていないことがあります。当院ではICD一次予防治療の適応がある患者さまには積極的にICD治療を提示しております。

心臓再同期療法(CRT)

CRTとは、ペースメーカのような機械の植え込み手術を行い、心臓の収縮のタイミングのずれを補正する治療です。心臓の収縮のタイミングのずれを生じている心不全の患者さまにCRTを植え込む治療を行うことで、患者さまの息切れなどの心不全に伴う症状を改善する効果があります。日本のみならず欧米においてもCRTは治療が必要な患者さまに十分に行き渡っていないのが現状であり、当院ではCRTの適応がある全ての患者さまにこの治療を受けていただけるように取り組んでいます。

デバイス遠隔モニタリング

ペースメーカやICD、CRTなどの植込み型心臓電気デバイスには、患者さまの自宅等に専用の小さな中継器を置くことにより遠隔通信(携帯電話の4G回線など)を用いてデバイスの状態や不整脈発生状況などの情報を病院へ送信する機能(遠隔モニタリング)を有しています。当院では遠隔モニタリングが導入可能な全ての患者さまに遠隔モニタリングを行い、送信されてきたデータを臨床工学技士と共に解析し、デバイスの異常や不整脈発生の早期発見に努めています。

血管疾患の診断と治療

末梢血管に対する血管内治療

下肢末梢動脈疾患とは

下肢末梢動脈疾患(LEAD)とは動脈硬化によって下肢の血流に問題が生じる病気です。よく見る症状としては歩いた時の足の痛み(間欠性跛行)など挙げられますが、年齢のせいで足取りが重くなった、他の人より歩みが遅くなったと感じる患者さまの中にも実は血流障害が原因の方もいらっしゃいます。血流がさらに悪くなると潰瘍やびらんなどが生じることもあり、さらに進行してしまうと最悪の場合、下肢切断に至る可能性もあります。一般的には喫煙や高血圧、糖尿病などの生活習慣病をお持ちの患者さまで特にリスクが高いと言われており、脳梗塞や心臓病など全身の血管疾患を合併する可能性があるとも言われております。

当院での検査

当科ではLEADを疑う症状がある患者さまに、ABIやCT、造影検査などで血流を調べる検査を行い、治療法を検討していきます。最近ではSPPという検査で皮膚の血流障害をより詳しく検査できるようになりました。

治療

血流改善を目的とした治療は主にカテーテルによる血行再建(EVT)を行っております。これは肘や鼠径部からカテーテルを挿入し、血流の悪くなった血管にワイヤーを通し、バルーンでの拡張やステントも用いて血流の改善を行います。カテーテル治療以外にも当院では循環器内科以外にも血管外科、腎臓内科ほかとも連携し、下肢救済のために血流障害に対する治療を行っております。

心不全・集中治療

当院の心血管集中治療について

急性心筋梗塞や急性心不全など、心血管疾患では突然発症し短時間で致命的な病態へと進行するものが多く、刻一刻と変化する病状へ迅速に対応するため集中治療室での治療が必要になります。当院では救命救急病棟(EICU)20床(うちICU個室8床)を備えて緊急入院に対応するほか、特定集中治療室(GICU)6床では手術後や入院中に集中治療が必要となった患者さまに集学的治療を提供する体制を整えています。
特に迅速な対応を必要とする急性心筋梗塞や心停止症例に対しては、救急外来に隣接した血管造影室で速やかに緊急カテーテル治療や機械的循環補助装置の導入を行うことが可能です。また、昨今の高齢化社会により複数の併存疾患を有する患者さまも増加しており、心血管疾患に呼吸不全、腎不全、敗血症などを合併し、人工呼吸器管理や血液透析、感染症治療が必要となる状況も少なくありません。当院では循環器専門医に加え、集中治療専門医、各診療科医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー、臨床工学技士など多職種によるチーム医療を展開し、それぞれの患者さまに合った治療を提供しています。

重症心不全と機械的循環補助装置

心臓は全身に血液を循環させるポンプの役割を担っています。このポンプ機能が破綻した重症心不全症例では、心臓のはたらきをサポートする機械的循環補助装置が必要となります。当院では大動脈内バルーンポンプ(Intra-aortic balloon pumping:IABP)や体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)などの機械的循環補助装置を使用することができます。

体温管理療法について

急性心筋梗塞や致死性不整脈などで心臓が止まってしまうと突然死をきたしますが、心臓が再び動き出しても、心停止中の脳血流低下による「低酸素脳症」という重篤な脳障害を生じることがあります。この低酸素脳症により運動麻痺や意識障害など高度の後遺症をきたし、その後の生活に大きな制限を強いられることがあります。
これまでの報告から発熱が脳障害を助長することが知られており、心停止後の脳障害が疑われる患者さまには、体温をコントロールすることで神経学的機能予後を改善することを目的とした「体温管理療法」を行うことがあります。
当院では高機能な体温管理機器を使用して、経験豊富な循環器専門医と集中治療専門医のもと質の高い体温管理療法を提供し、心停止後の患者さまの予後改善に努めています。

弁膜症・心筋症・
サルコイドーシスの診断と治療

包括的な循環器診療を提供します。

上記以外にも循環器内科で対応する疾患はまだたくさんあります。心臓弁膜症に心サルコイドーシスや心アミロイドーシス、肥大型心筋症などの心筋疾患、肺高血圧症、先天性心疾患など我々が診療を行う疾患は多岐にわたります。
多くの患者さまに適切な医療をお届けするため、各種検査機器をアップグレードし、またそれを扱う医師やスタッフの技術向上を図りました。心臓MRI、シンチグラフィ、FDGペット検査を駆使することで心筋症の診断が容易になりました。また、通常の心エコーに加え、運動・薬物負荷心エコーや経食道心エコーを組み合わせることで治療が必要な心臓弁膜症を早期に発見しています。
各種疾患の治療方針は循環器内科、心臓外科、血管外科の医師が参加する合同カンファレンスで決定しています。名古屋大学病院と緊密な連携をとっていますので、必要に応じて紹介させていただくこともあります。重症患者さまや稀な疾患でお悩みの方にも安心して治療を受けていただけるよう努力します。
豊田地域の心疾患患者さまを取りこぼさない、包括的な循環器診療の提供を我々は目指しています。

心臓MRI

心臓MRI

シンチグラフィ

シンチグラフィ

FDGペット検査

FDGペット検査

経食道心エコー

心臓リハビリテーション

心臓リハビリテーションに参加して、より長く、より良い生活を送りましょう!

心肺機能とは心・肺・筋肉が有効にエネルギー代謝を行うことができる能力のことです。心疾患を有する患者さまの多くは心肺機能が低下していますが、心肺機能は改善することができます。通常の心疾患治療に加えて、「心臓リハビリテーション」を行うことで心肺機能が向上します。心肺機能が向上すると生命予後が良くなる (つまり、長生きできる可能性が高くなる) だけでなく、生活の質 (QOL) が改善し、より充実した生活を送ることができることが数多く報告されています。
心臓リハビリテーションはほとんど全ての安定した心疾患患者さまにとって有効です。
具体的には、心臓リハビリテーションとして週1-2回、当院心臓リハビリテーションセンターで1時間ほどの運動を行います。レジスタンストレーニングと自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動を組み合わせることで心肺機能の向上を図ります。”自主トレ”としてご自宅でも運動していただけるよう、ご指導いたします。5か月の心臓リハビリテーションプログラムの最初と最後で心肺運動負荷試験を行い、心肺機能の変化を確認し、今後の運動についてアドバイスします。
心臓リハビリテーションを行うことで、より長く、より良い生活を送りましょう。皆さまの参加をお待ちしています。

リハビリテーションセンター

自転車エルゴメーター

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