診療実績

臨床指標(質評価指標)とは

  • 臨床指標(クリニカルインディケーター : Clinical Indicator)
  • 質評価指標(クオリティーインディケーター : Quality Indicator)

臨床指標は、医療の質を具体的な数値として示したものです。これにより医療の質を客観的に評価することが可能となるので、最近は質(評価)指標という用語もよく使われています。
医療の質は、1.構造(ストラクチャー Structure)2.過程(プロセス Process)3.結果(アウトカム Outcome)の3つの側面について評価されることが一般的です。

  1. ストラクチャー
    施設、医療機器、医療スタッフ(専門職)の種類と数など
  2. プロセス
    実際に行われた診療行為や看護ケア
  3. アウトカム
    行われた医療の結果(治療成績など)

当院では、2005年より臨床指標への取り組みを開始しました。
当院の臨床指標はプロセス指標とアウトカム指標から構成され、2005年の56指標より始まり、最大時では170指標、現在は95指標となり、院内各部署で質向上活動に利用されています。
日本では各臨床指標の定義(計算式や条件)の標準化が不十分であり、各病院から出されている指標の数値だけを単純に比較評価することには慎重になる必要があります。
今回は一般の方が医療の質を分かりやすい情報としてとらえていただけるよう意識して、カテゴリー別に代表的な臨床指標を選んでみました。今後は順次、公開する指標数を増やしていく予定です。

1. 病院全体に関する指標

平均在院日数

病床稼働率

【目的】

平均在院日数と病床稼働率は病院の経営管理状態を示す指標の一つです。
地域の中核基幹病院である当院は、入退院の回転をスムーズにし、常に利用可能な病床を提供する必要があります。

【定義】

平均在院日数

分子:年間在院延べ患者数
分母:(年間新入院患者数+年間退院患者数)×1/2

病床稼働率

分子:24時時点在院患者数+退院患者数
分母:稼働病床数×365日(1年暦日)

【解説】

質の保証と医療の効率化が高いレベルで達成されるほど、平均在院日数は短縮すると言われています。当院の平均在院日数は大変良いレベルと考えています。

2週間以内の入院サマリー完成率

【目的】

入院サマリー完成率(一定期間内に入院サマリーを作成完成すること)は、病院の医療の質を示す指標の一つです。

【定義】

分子:退院後2週間以内の完成件数
分母:退院患者数

【解説】

入院サマリーとは、患者さまの入院中の経過や治療内容を簡潔にまとめたものです。またこれには患者さまの病歴や基本的な情報も記録されているので、退院後速やかに完成されることはとても重要です。当院は様々な対策によって高いレベルを達成しています。

クリニカルパス適用率

【目的】

標準化された医療が、患者さまにも医療スタッフにも「見える化」された状態でどれほど提供されているかを示す指標です。

【定義】

分子:クリニカルパス適用件数
分母:新入院患者数

【解説】

クリニカルパスは標準的な医療のスケジュールをわかりやすく書式化したものです。医療の質は、標準医療への準拠の程度によって測定されるとも言われています。ばらばらな医療が提供されていては、安定した良い結果は得られません。標準化された医療を的確に提供すると共に、病態の変化に応じて早期に適切な対応をすることが質の高い医療であると考えています。当院のクリニカルパスは2004年から電子化され、電子カルテ上で運用されています。

2. 疾患に対する指標

急性心筋梗塞 : 平均在院日数

【目的】

平均在院日数は、急性心筋梗塞患者さまに対して適切な医療やケアの介入がなされているかどうかの総合的な指標と言えます。

【定義】

平均在院日数

分子:急性心筋梗塞患者の延べ入院日数
分母:急性心筋梗塞の新入院患者数

【解説】

急性期にステント植え込みを含め、積極的に有効な治療(インターベンション)を行うことにより平均在院日数の短縮を認めています。また、回復期の心臓リハビリテーションにも取り組んでいます。

糖尿病 : HbA1c改善率

糖尿病 : 患者の紹介および逆紹介件数

【目的】

糖尿病地域医療における役割と糖尿病診療の質を評価するための指標です。

  1. 初診・初期指導後で早期逆紹介困難例のHbA1c改善率
  2. 糖尿病患者の紹介・逆紹介件数

【定義】

HbA1c改善率

分子:HbA1cが4回以上検査された患者さまを対象として対象患者の12カ月以内のHbA1c最終平均値
分母:対象患者の治療開始時HbA1c平均値

糖尿病患者の紹介および逆紹介件数

紹介:地域の診療所などから当院に紹介
逆紹介:当院から地域の診療所などに紹介

【解説】

当院の糖尿病地域医療における役割として、外来初期指導後や入院後退院時の早期逆紹介が多くなっています。初診患者さまの半数以上は方向性が決まり良好な経過が予想されるため、HbA1c値が下がる前に積極的に地域の診療所などへ逆紹介しています。HbA1c値は患者さまの過去12か月間の平均血糖値を反映する指標で、6.5未満であれば血糖コントロールは「良」と評価されます。
HbA1cが年4回以上検査された患者さまを継続通院(当院での管理症例)と定義し、改善率を評価しました。したがってここでのHbA1c改善率は、糖尿病患者さま全体のうち管理が困難と考えられる40数%のデータです。

肺炎 : 平均在院日数

肺炎 : 初期治療成功率

【目的】

肺炎患者さまに対して適切な医療やケアの介入がなされているかどうかの総合的な指標と言えます。肺炎は呼吸器科入院患者の中で最多の疾患です。平均在院日数と初期治療成功率を経時的に追跡することで、呼吸器科における肺炎診療の質評価と改善を図ります。

【定義】

肺炎患者の平均在院日数

分子:肺炎患者の延べ入院日数
分母:肺炎の新入院患者数

肺炎患者の初期治療成功率

分子:初期抗菌剤変更なし退院患者数
分母:肺炎入院患者数

3. がん診療に関する指標

2015年~2017年 
5年生存率(実測生存率)

肺がん

乳がん

  • 集計対象10症例以上の際表示

胃がん

大腸がん(結腸)

大腸がん(直腸)

【目的】

がん疾患の予後を測るための指標の一つです。

【定義】

診断から5年経過後に生存している患者の比率。

消化器がん : 術後在院日数

胃がん

結腸がん

直腸がん

【目的】

消化器がん手術患者さまに対して適切な医療やケアがなされているかどうかの総合的な指標と言えます。またこの指標は入院前の説明を含めた手術治療の周術期経過を反映する指標とも言えます。

【定義】

消化器(胃・結腸・直腸)がん手術実施患者の術後から退院するまでの平均在院日数

分子:各消化器がん術後の延べ入院日数
分母:各消化器がん入院手術患者数

肺がん : 術後在院日数

【目的】

肺がん手術患者さまに対して適切な医療やケアがなされているかどうかの総合的な指標と言えます。
またこの指標は入院前の説明を含めた手術治療の周術期経過を反映する指標とも言えます。

【定義】

肺がん手術実施患者の術後から退院するまでの平均在院日数

分子:肺がん術後の延べ入院日数
分母:肺がん入院手術患者数

乳がん : 乳房温存手術の割合

【目的】

乳がんの中で、増加している早期発見治療例の割合を知る指標です。
患者QOLの面で社会的注目度が高い指標です。

【定義】

分子:乳がん部分切除(腫瘍摘出含む)件数
分母:乳がん手術件数

4. 産科医療に関する指標

母体(妊婦)搬送受入れ件数

母体(妊婦)搬送お断り件数(率)

【目的】

産科救急医療への貢献度を示す指標の一つです。

【定義】

地域医療機関より救急車等で当院を紹介受診し、そのまま入院となった場合を母体(妊婦)搬送といいます。

分子:お断り件数
分母:お断り件数+受け入れ件数

【解説】

豊田市を中心とした西三河北部医療圏では当院が周産期母子医療センターの認定をうけ、NICU(新生児集中治療部)を有しています。当院のNICUや産科病棟が満床で受入れができない場合には、他の医療圏の周産期母子医療センターへ搬送する連携体制をとっています。

5. 医療スタッフに関する指標

リハビリテーション :
入院2日以内のリハビリ依頼率

【目的】

リハビリテーションは可能な限り早期からの取り組みが効果的であると言われています。患者さまの早期回復、早期社会復帰を目指し、より早期にリハビリテーションを開始するための指標です。

【定義】

分子:入院2日以内のリハビリ依頼件数
分母:リハビリ依頼件数

【解説】

入院日から2日以内に出されたリハビリ依頼件数を全体のリハビリ依頼件数で除したものです。

医療ソーシャルワーカー:
入院患者へのMSW介入率

【目的】

入院された患者さま・ご家族に対して、MSW(医療ソーシャルワーカー)という専門職による介入がどれだけ提供できているかを把握するための指標です。

【定義】

分子:MSWが介入した患者数
分母:退院患者数

【解説】

入院されている患者さま・ご家族にとって、退院後の療養先や療養方法、傷病によって発生する日常生活での課題は様々であり、悩みや不安によるご負担も少なくありません。MSWはそのような状況の患者さま・ご家族の意思決定を尊重し、どのような方向性で療養やケアを考え進めていくのか、一緒に考えていきます。結果、患者さま・ご家族が安心して治療を受け、療養することができるなど、「医療の質向上」につながります。

指導医 : 研修医一人当たりの指導医数

【目的】

当院の臨床研修制度に対する教育・指導体制の充実度を示す一つの指標です。

【定義】

分子:指導医数(指導医講習会受講者数)
分母:初期研修医数

【解説】

当院は毎年約15人の臨床研修医を採用し活気のある臨床研修を行っています。
今後も指導医の増強など指導体制を充実し、優秀な研修医を採用することによってさらに活気のある臨床研修を進めていきます。

6. 患者満足度に関する指標

患者アンケート調査の「知人に勧めたい」割合

(注)2020~2022年はコロナ禍のため、患者アンケート調査は中止いたしました

【目的】

「当院を知人に勧めたい」という患者さまのお気持ちは当院に対する満足感の表れだと考えています。

【定義】

年に1度実施される患者アンケートの結果
(外来:特定日調査、入院:特定月調査)

【解説】

当院では毎年の患者満足度調査を通して、CS(顧客サービス)がきちんとできているかどうかを調べ、CS向上活動に力を注いでいます。入院・外来ともにやや減少傾向にあることが気がかりです。もちろん、この数値にはCS的要因だけでなく、建物や医療設備などハード的要因も関与していることは承知ですが、少しでも多くの患者さまがこの質問に「イエス」と回答してくださるよう、さらなる努力が必要と考えています。

外来患者診療待ち時間30分以上の割合

【目的】

患者さまにとって苦痛と感じる30分以上の診療待ち時間(患者満足度調査結果より)の発生件数を低減し、CS向上を目指すための指標です。

【定義】

分子:30分以上の待ち時間患者数
分母:外来受診患者数

【解説】

当院では、はじめての患者さまでもお電話でのご予約が可能なシステムを採用しています。1日に1,200名前後の外来患者さまが来院されていますが、平均待ち時間は数年来13〜15分で推移し、比較的短いと考えています。2019年までは、1時間以上の診療待ち時間の発生率について低減を図ってきましたが、2020年からは、患者さまアンケートの結果をもとに、当院通院中の患者さまが長いと感じている「30分以上の診療待ち時間」について、発生率を5%未満に低減していくことを目標としました。待ち時間低減に向けて、多方面から改善策を打っていきたいと考えています。

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