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医学生の皆さまへ

病院長
岩瀬 三紀

トヨタウェイを軸に
“富士山登山の一合目から”
研修しよう!

トヨタウェイ2001とは、暗黙知としてトヨタの中に受け継がれてきた深淵や価値観を、誰の目にも見え、体系的に理解できるように当時の社長であった張富士夫さんが集約された行動原則です。このトヨタウェイは組織における自律神経とも言え、研修医教育にも適用できます。トヨタウェイの2本柱は、知恵とカイゼン(Continuous Improvement)と人間性尊重(Respect for People)です。そして以下の5項目からなります。

知恵とカイゼンとして3項目

  • 【Challenge】夢の実現に向けて、ビジョンを掲げ、勇気と創造力をもって挑戦
  • 【Kaizen】常に進化、革新を追求し、絶え間なく改善に取り組む
  • 【Genchi Genbutsu】現地現物で本質を見極め、素早く同意、決断して、全力で実行

人間性尊重として2項目

  • 【Respect】他を尊重し、誠実に相互理解に努め、お互いの責任を果たす
  • 【Teamwork】人材を育成し、個の力を結集

知識、技術、コミュニケーション能力の3つすべてを向上し続ける能力が、医師の成長にとって重要です。当院の初期研修は、初期研修制度発足以来、毎年カイゼンが繰り返されて、安全かつ笑顔で医師としてスタートする仕組みがあります。幸い、毎年全国から優秀な研修医や個性豊かな(おもしろい)研修医が集まって来ています。

昔から、『百聞は一見にしかず』の格言があります。教科書に記述されている医学的な知識だけでは患者さまを満足させる還元はできません。医師の成長には必ず経験が必要です。当院ではER研修を重要視しており、様々な症例を十分に経験できます。聞くだけや、読んで得た知識より、現地現物で実際に得た知恵は財産となります。たとえば人形や手術前の条件の良い状態での気管挿管は完璧にできても、吐物のある症例や心臓マッサージをしながらの緊急時の挿管等の実臨床の場では難易度は跳ね上がります。そして、貴重な経験を得てしっかり考えて行動、すなわち『考動』することが成長の素です。また、当院では病棟でのHospitalist研修にも力を注いでいます。しっかり考動すれば、いろいろな経験はみなさんの血となり肉となるでしょう。

私は幼少時より富士山が大好きです。特に、山部赤人が読んだ『田子の浦ゆうち出でてみれば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける』で詠われた太平洋側から観るダイナミックな霊峰富士が好きです。しかし、富士山は須走側からみても、富士吉田側からみても全ての人の心を和ませます。医師に限りませんが、医療人は患者さまに富士山を見たときに感じる様な安堵や感謝、感動を与えることが可能なprofessionと考えます。富士山の裾野は広く、また樹海とも呼ばれるジャングルの様な秘境もあります。多くの業種の同僚と患者さま目線でチーム医療の実践を続ければ、患者さまや御家族に安堵感をプレゼントできます。みんなで樹海を巧くさけ、一歩一歩、我々と一緒に着実かつ安全に登り、信頼される有能な医師を目指しましょう。

張富士夫さんが中京大学の講演で、『大学で知識を身につけ、社会に出たら実践が大事。人の中に飛び込んで失敗にめげずにやり遂げて欲しい。』と呼びかけられました。張さんは入社時に、御自身の取り柄がわからず、配属希望の欄に『どこでも良い』と書き、当初は広報部に配属され、新聞記者から記事の書き方を学んだそうです。初期研修では、自分の志望科が明確な人も未定の人も、プライマリ・ケア中心の各科をローテートしつつ、色々な困難と失敗を経験して、医師としての挑戦とカイゼンをし続け裾野を広げ、チームで頂上(標高3,776メートル)を目指し、前向きに登りましょう。

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