がん診療について

手術療法

当院は2016年9月に導入した「内視鏡手術支援ロボット ダビンチ」を2023年3月に追加導入し、2台体制にしました。ダビンチによる手術は、従来の人の手による手術と比較して患者さまのお身体への負担が少なく精緻な手術を行うことができます。
消化器外科、呼吸器外科、産婦人科、泌尿器科がダビンチを使用しており、胃がん、直腸がん、肺がん、縦隔腫瘍、前立腺がん、腎がん、子宮体がんに対するロボット手術の総件数は1,000件を超えました。
手術を受ける患者さまが抱える不安を取り除くため、術前には患者さまとよく話し合い、治療効果とQOLの維持のバランスを考えて手術を計画するよう心掛けています。

診療科別ダビンチ手術実績【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
消化器外科 4 39 59 79 160
呼吸器外科 48 49 45 78 131
泌尿器科 31 30 21 29 41
産婦人科 17 17 19 22 35

臓器別ダビンチ手術実績【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
4 8 8 19 36
直腸 0 31 51 60 49
結腸 0 0 0 0 75
0 2 5 13 44
縦隔 0 0 0 14 11
前立腺 24 25 19 21 30
7 5 2 8 11
子宮 17 17 19 22 35

薬物療法

安心して化学療法を受けていただくために、がんを専門とする腫瘍内科医、がん化学療法専門看護師、がん専門薬剤師が化学療法センターに常駐し、患者さまにとって最適な化学療法を提供しています。化学療法の副作用に対して不安を抱く患者さまは少なくありません。看護師は体調変化についてきめ細かくお話をうかがい、薬剤師は効果的な化学療法を提供できるように医師が処方した内容を監査するとともに、治療に関する詳細な説明と薬剤指導を実施し、患者さまが安心して化学療法を受けられるよう努めています。
化学療法センターで少しでも快適にお過ごしいただくために、フルフラット可能なリクライニングチェアや専用トイレ、アピアランス商品の展示コーナーを設置しました。

治療実績【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
外来化学療法 4,112 4,209 4,036 4,220 4,335

放射線治療

トゥルービーム

トゥルービームは内蔵されたエックス線画像装置を用いて、放射線の量・強さをち密に変化させることで正常細胞には照射を弱く、がん細胞に対しては照射を強くする「強度変調放射線治療(IMRT)」という治療を行うことができます。
当院においては、治療装置を回転させながら強度変調放射線治療(IMRT)をおこなう、強度変調回転放射線治療(VMAT)を実施しており、今まで1回15分程度かかっていた治療時間が1~2分程度で終えることができます。

強度変調放射線治療
(Intensity Modulated Radiation therapy : IMRT)

放射線治療では「がん」のみに放射線をあてることが理想です。しかしながら、がんの周囲には正常な部分や健康な臓器が多く存在します。できるだけ正常な部分には少なく、がんの部分には集中するような技術、方法が必要であり、これを可能にしたのが「強度変調放射線治療(IMRT)」という方法です。
従来の放射線治療は、一定方向から均一の放射線を照射していました。周囲の正常な部分にも多くの放射線があたってしまうため、がんに十分な放射線をあてることが困難でした。対して、強度変調放射線治療(IMRT)は、コンピュータの力を借りて照射する方向によって、放射線の量、強さを緻密に変化させ照射する方法です。これにより、周囲の正常な部分にあたる放射線の量を抑えながら、がんそのものに多くの放射線をあてることが可能になりました。

前立腺がんの放射線治療の場合(線量分布)

前立腺の周りには放射線があまり当たってほしくない膀胱や直腸があります。下図の右に行くにつれて、前立腺の周りにある膀胱や直腸に当たる放射線の量が少なくなっています。

※色が付いているところが放射線が当たっているところ。
 赤:強く当たっている  
 青:弱く当たっている

4門治療

IMRT

VMAT

当院においては、治療装置を回転させながら強度変調放射線治療(IMRT)をおこなう、強度変調回転放射線治療(Volumetric Modulated Arc Therapy : VMAT)を実施しており、今まで10分から15分ほどかかっていた1回の治療時間が1分から2分ほどで終了することができるようになりました。

TrueBeamで体内の「見える化」

TrueBeamは治療するベットに寝たまま装置が体の周りを1回転するだけで、CT写真(断層写真)を撮影することができるようになったため(Cone Beam CT 写真参照)、X線写真では見えなかった軟部組織のがんが金属マーカーを埋め込むことなく位置を同定して放射線を照射することができるようになりました。また、金属マーカーを埋め込まないため、患者様にやさしい非侵襲的な治療をすることができるようになりました。

X線写真(前立腺部)

TrueBeamのCone Beam CT写真(前立腺部)

ExacTrac®システム

ExacTracシステムは高精度の赤外線カメラと2つのX線撮影装置を用い、迅速で正確な患者様の位置合わせが可能です。また治療中は常に患者様の位置を赤外線カメラで監視していますので、治療中、患者様が動いてしまった場合などは、直ちに治療を中断することができるため、安全に治療することが可能です。

X線撮影装置

赤外線カメラ

左乳房に対する深吸気呼吸停止(Deep Inspiration Breath Hold; DIBH)照射

心臓の被ばく量の増加は将来的な心疾患のリスクを高めることが知られています。左乳がんの術後放射線治療を行う際、多くの症例では、通常の自由呼吸下での照射は心臓(心膜や冠動脈)の一部が照射範囲内に含まれてしまいます(図左)。
当院では2018年11月より左乳房の深吸気呼吸停止(DIBH)照射を実施しています。大きく息を吸うことで肺が膨らみ、心臓を照射範囲から離すことが可能になります。息止めしていただいている間に照射を行うことで心臓の被ばく量を下げることができます(図右)。
ただし、全ての症例では実施しておらず、患者さま一人ひとりの状態やご希望に合わせて呼吸停止照射の実施の可否を検討し、皆さまに安全安心の放射線治療を提供できるよう努めています。

(左)自由呼吸CTを用いた治療計画.心臓が照射範囲(赤~青の領域)に含まれている。
(右)深吸気呼吸停止CTを用いた治療計画.心臓が照射範囲から外れている。

トゥルービームによる放射線治療(動画)

サイバーナイフ

当院は2015年9月に日本で初めて、定位放射線治療「サイバーナイフM6」を導入した施設です。
サイバーナイフは放射線の照射口が付いたロボットアームが自由自在に動かせるため、あらゆる角度からがん細胞へ放射線を照射することができます。また、呼吸によって動いてしまうがん細胞に対しても自動的に追尾するシステムを有しており、呼吸を止めることなく自然な呼吸をしながらでも放射線治療を受けることができます。

サイバーナイフの特徴

サイバーナイフは呼吸により動いてしまう腫瘍に対しても、ロボットアームが腫瘍を自動的に追尾しながら放射線を当てるシステムを有しているため、患者さまは息止めやお腹の圧迫をすることなく、自然な呼吸をしながらでも高精度な放射線治療を受けることができます。

マルチリーフコリメータ(MLC)

マルチリーフコリメータ(MLC)

最新モデルであるサイバーナイフM6は6世代目のサイバーナイフであり、新たにマルチリーフコリメータ(MLC)が追加されました。従来は円形の放射線を用いて治療をしていましたが、MLCが搭載されたことにより腫瘍の形状に整形した放射線を当てることが可能となります。この機能を用いることで、より効率的に放射線を腫瘍に集中させることができ、治療時間の短縮も期待されます。

サイバーナイフM6による放射線治療をVR(Virtual Reality)で模擬体験

サイバーナイフM6による実際の放射線治療を模擬体験することが可能になりました。放射線治療は痛みのない非侵襲的な治療であるため、この模擬体験によって、実際の放射線治療と変らない体験をすることが可能です。

  • 実際の治療時間は20分~40分くらいの治療時間となります。
  • VR専用ゴーグルもしくは画面を移動させることにより、360度全方位を見ることが可能です。
  • この動画360度全方位動画を視聴するには、Chrome, Opera, Firefox, MS Edge最新バージョン、YouTubeアプリの最新バージョンが必要です。

前立腺がんの定位放射線治療

前立腺がんに対する放射線治療の標準的な治療方法は、1日1回、2Gy(グレイ)という放射線の量を37回~39回、計74~78Gyを前立腺に照射することが多く、照射だけで、7~8週間と約2ヵ月間の治療期間が必要となります。近年、同等の治療成績が報告されている定位放射線治療(1日1回、7.25Gy×5回、計36.25Gyを照射)が国内において実施されるようになりました。また、2016年より、前立腺がんに対する定位放射線治療も健康保険が適用されるようになり、保険の範囲内での治療が可能となりました。

  • 治療回数が極端に少なくなることから、超寡分割照射(Ultra-Hypofractionated Radiation Therapy)とも言われています。

当院においても、2017年6月より前立腺がんに対する定位放射線治療を開始しました。
前立腺がんに対する定位放射線治療の1回の放射線の量は、標準的な治療方法である2Gyから7.25Gyに増加した為、正確に前立腺に放射線を照射し、周囲の臓器には放射線を極力照射しないようにする必要があります(図)。しかし、照射中に前立腺が動いてしまったり、周囲の直腸や膀胱の位置や形が変わってしまうことがあります。その為、当院においては、前立腺の中に金マーカーを植込み、そのマーカーを目印に前立腺をサイバーナイフで追尾しながら照射しております。さらに、患者様と医療スタッフが協力し、便の回数や状態、尿の量の調整により、直腸や膀胱の位置や形が毎日同じようになるように努めております(なぜ直腸や膀胱の位置や形が重要なのかの疑問は こちら)。
照射回数が5回になることにより、患者様の通院の負担が減り、日常生活にほとんど支障なく前立腺がんの放射線治療がおこなえるようになりました。

  • 治療の準備のために別途複数回来院して頂く必要がございます。

詳しくは 実際の治療の流れをご覧ください。

暖色:強く放射線が当たっている 
冷色:弱く放射線が当たっている
前立腺部分に放射線が強く当たり、周りの直腸、膀胱、尿道にはあまり放射線が当たっていない。

サイバーナイフによる放射線治療(動画)

放射線治療全般【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
放射線治療部門の新規患者 273 267 281 276 242
放射線治療患者実患者 352 338 344 364 296
定位 (脳)照射を実施した
実患者
51 41 41 55 59
定位 (体幹部)照射を実施した実患者 337 324 330 346 54
IMRT照射を実施した実患者 136 105 70 90 83

原発巣別新規患者【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
脳・脊髄 14 3 11 8 18
頭頸部
(甲状腺を含む)
6 16 14 7 8
食道 6 6 5 5 9
肺・気管・
縦隔
57 57 53 67 43
再掲:肺 57 54 51 63 42
乳腺 47 48 54 39 39
肝・胆・膵 18 20 26 12 15
胃・小腸・
結腸・直腸
16 7 11 13 11
婦人科 16 14 6 18 11
泌尿器系 78 78 90 80 66
再掲:
前立腺
70 69 76 65 62
造血器
リンパ系
6 4 5 14 12
皮膚・骨・
軟部
3 0 3 1 1
その他 (悪性) 0 5 1 2 1
良性 1 1 0 0 1
15歳以下の
小児例
0 0 0 0 0

脳および骨転移治療実患者【年度別】

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2018 2019 2020 2021 2022
脳転移 52 49 43 61 49
骨転移 54 49 55 63 37

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